大気汚染地球温暖化対策について話し合う国際会議「COP21」で、習近平国家主席は二酸化炭素排出量を削減する「自信と決意はある」と訴え、人民網(11月26日)でも、「気候変動に対して、中国は常に国際的な責任と義務を積極的に担っている。」とアピールしています。

その背景には、「大気汚染防止法」の改正法があります。
15年ぶりの改定となる新法は2016年1月1日より施行されます。

新法では、

  • 重点地域大気汚染共同対策
  • 重汚染天候対応
  • 大気対策基準
  • 期限内改善計画

が新たに設けられています。
2015年1月1日より既に施行されている改定版環境保護法を踏まえて罰則が大幅に強化され、脱硝・VOC(揮発性有機化合物)対策・水銀除去・POPs(残留性有機汚染物質)・有毒有害大気汚染対策が導入されました。
これにより、大気汚染対策は一層進み、製造業にとっては更なる対応が必要となり、大気汚染処理分野(例:シェールガス・天然ガス・電力・再生可能エネルギー、PM2.5排出を抑制、石油の精製)の市場は大きく拡大するとみられます。

以下、改正法の重要なポイントをまとめています。

大気汚染防止措置

大気汚染防止措置の章では、

1.石炭とその他エネルギー
2.工業汚染対策
3.自動車・船舶等汚染対策
4.砂埃汚染対策
5.農業とその他汚染対策

の5節に分けて詳細に規定しています。
現地に進出する企業としては、自社の属する業界に関係する汚染防止措置を、改めて確認することが必要です。

重点地域大気汚染共同対策と重汚染天候対応

これは新たに設けられた章であり、行政区域を越えた広域的な大気環境対策を盛り込んでいます。重汚染天候対応も新たに設けられた章であり、深刻な大気汚染状態が続くことが予測される場合、建設工事の停止、自動車走行規制、工場生産制限、学校屋外活動停止などの緊急対策措置を発動することを盛り込みました。

大幅に強化された処罰

現行法では大気環境を深刻に汚染する設備の淘汰制度を規定していますが、新法では設備だけでなく生産工程や製品も淘汰対象としました。汚染排出企業に対する検査手法として、現行法で規定している立入検査だけでなく、自動モニタリング、リモートセンシング、遠赤外線撮影等も規定しました。
また、法令に違反して大気汚染を排出して深刻な汚染を引き起こした、または引き起こし得る場合、または証拠隠滅のおそれのある場合、環境行政部門は施設・設備・物品の封鎖・差押え等の行政強制措置を行うことができると新たに規定しました。
同法では地方政府の監督責任下において重大な汚染事故を起こした企業に対し、これまで上限が50万元(約1000万円)であった罰金額が、汚染程度の被害額の3倍ないし5倍までに引き上げられます。

このように具体的な罰金制度を規定したことには注目すべきです。現地に進出する企業としては、一定の場合には企業内部の責任者等に対する責任追及がなされる可能性もあることを改めて認識することが必要です。

今後の注意点

なお、中国の法律は一般に原則・方向性・方針的な内容が多く、多くの条項で詳細は別途策定する下位法令や標準規格を参照するように書かれています。
そのため、今後公布される見込みの下位法令や通達、重点汚染排出企業リスト、有毒有害物質リスト、標準規格等の情報をしっかりフォローし、対応していく必要があります。
また、重点区域として指定された地域(例:北京市、天津市、河北省及びその周辺)に進出する企業は、当該区域で独自に実施される大気汚染規制措置の有無・内容につき留意することが重要です。

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まとめ:中国「大気汚染防止法関連」のニュース


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