中国の国家市場監督管理総局は1月2日、独占禁止法の改正案を発表し、1月31日までの公開意見募集を終えました。

2008年から施行された中国「独占禁止法」は施行から11年が経ちました。この11年間に中国の経済は著しい変化が生じ、特にインターネットやモバイルインターネット等の分野において新しい技術や産業が急速に発展したことにより、現行独占禁止法ではインターネット経済における新たな問題に対応し切れず、今回の改正に至りました。

今回の改正は中国で「大改正」ともいわれ、主にインターネット領域事業者の市場支配的地位の認定基準の新設、公正競争審査制度の導入、及び罰金の引上げの改正が行われます。
以下に、それぞれの改正点に関するポイントをご紹介します。

(1) インターネット領域事業者の市場支配的地位の認定要件を定める

まず、インターネット領域事業者の市場支配的地位の認定基準について21条2項を新設し、認定要件を定めました。
具体的には「インターネット領域事業者の市場支配的地位の認定においてネットワーク効果、規模の経済(economies of scale)、ロックイン効果、データの把握及び処理能力等の要素も考慮すべき」とし、インターネット領域事業者の市場支配的地位を認定する際に一般要件である21条1項各号以外に2項の要件もあわせて考慮すべきと定めました。

(2) 「公正競争審査制度」の導入

中国現行独占禁止法37条は「行政機関は行政権力を濫用し、競争の排除又は制限を含んだ規定を制定してはいけない」としていますが、改正により「行政機関及び法律、法規が授権し公共事務を管理する職権を有する組織」となり、主体の範囲が広がりました。
さらに、「行政機関及び法律、法規が授権し公共事務を管理する職権を有する組織は市場主体経済活動に関する規定を制定する際に、国家の規定に従って公正競争審査をすべき」と2項を新設し、今まで国務院の「意見」において定められていた「公正競争審査制度」が上位の法律の中に正式に立法化されるようになりました。しかし、この制度の実際の適用においてまだ議論の余地があると専門家に指摘されているようです。

(3) 大幅な罰金引き上げ

もう一つの大きな改正は罰金の大幅な引上げです。
現行独占禁止法では独占契約を結び、且つ契約を実施した事業者に対し不法所得を没収した上で前年度の売上高の1%~10%の罰金が科される部分は変化がありません。
しかし、締結した独占契約をまだ実施していない事業者に科する罰金の額は現行法の「50万元」に対し、改正案は「5,000万元」まで引上げ、100倍も増加しました。
また、現行法では協会の事業者が独占契約を締結した場合、「50万元」の罰金が科されると定めていますが、今回の改正では「500万元」まで引上げ、10倍も増加しました。

独占契約の締結及び実施に関する罰金以外にも、情報の提供の拒絶や隠匿、虚偽報告等をした事業者及び個人に対する罰金にについて計算方法の改正が行われました。

以上が、今回の主な改正点ですが、これ以外にも事業者が独占契約の締結に関する規制など、多くの分野にわたり改正が行われます。

※参考:国家市場監督管理総局の関連ページはこちら

(日本アイアール株式会社 B・Y/K・F)


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