電子商取引法2018年8月31日、「中華人民共和国電子商取引法」(以下、電子商取引法)が、第13期全国人民代表大会常務委員会第5回会議にて可決され、2019年1月1月より施行の運びとなりました。
約5年の歳月を費やし、中国の立法過程では異例となる4回の審議を経て制定された本法ですが、eコマースプラットフォームの規範化と消費者保護を目的とし、参入の条件や違反事項に係る罰則などを初めて明確化しています。

1.電子商取引法の適用範囲

本法において電子商取引とは、「インターネットなどの情報ネットワークを通じて商品を販売、若しくはサービスを提供する経営活動」と定義されており、中国国内で電子商取引を行う場合に本法が適用されると定められています。
なお、金融類の商品・サービスや、情報ネットワークを利用したニュース情報・音楽映像番組、出版及び文化作品等のサービスを提供する場合は本法の適用外となります(第2条)。

2.電子商取引経営者とは

電子商取引経営者とは、インターネットなどの情報ネットワークを通じて商品を販売、若しくはサービスを提供する経営活動に従事する自然人・法人及び非法人組織を指し、

  • 電子商取引プラットフォームの経営者
  • プラットフォーム内の経営者
  • 自ら構築したウェブサイト・その他のネットワークサービスを通じて商品を販売、若しくはサービスを提供する電子商取引経営者を含む

とされています(第9条)。

また、電子商取引経営者は農作物の販売などをはじめとする一部の例外を除き、原則として市場主体登記を行わなければならず(第10条)、法に則り納税の義務も課せられます(第11条)。

こうした内容を受け、巷では「微商」は電子商取引経営者に含まれるのか、という点が注目を集めています。「微商」とは、微信(WeChat)の朋友圏(モーメンツ)などを通じて商品販売を行うという新形態のビジネスモデル。CtoCでの運営も多いことから、新法の厳しい管理化に置かれるのかどうかは利用者にとって大きな関心事となっています。この点について、例えば2018年9月6日付の中国消費者報は、微商も電子商取引経営者に含まれるという見解を示していますが、厳密な判断については、法施行前後の検討と議論の成熟をもう少し待った上で確認すべきでしょう。

また、電子商取引経営者が販売・サービスにおいて「抱き合わせ」を行う場合は目立つ形で消費者への注意喚起を行わなければならず(第19条)、デポジットを取る場合はその返還方法を明示しなければならない(第21条)と定めるなど、消費者保護の姿勢を強く打ち出しています。

3.電子商取引プラットフォームの経営者に対する各種要求

自らのプラットフォーム運営において必要な条件を満たすことは当然のことながら、プラットフォーム内の経営者に対し取引価格等において不合理な条件を課してはならないなどの点が定められました(第35条)。
また、プラットフォーム内の経営者の行為についても十分な注意を払うことが求められています。
例えば、プラットフォーム内の経営者が販売する商品や提供するサービスが人身や財産の安全を保障するという要求に適合しているか、消費者の合法的権益を侵害しないかという点を把握していなければならず、必要な措置を取っていない場合は、連帯責任を負うことになります(第38条)。
さらに、信用評価制度の構築も義務付けられており、「プラットフォーム内で販売する商品若しくは提供するサービスに対する消費者の評価を削除してはならない」と明記されています(第39条)。

4.罰則

本法では各種の違法行為とそれに対する罰則が定められていますが、中でも厳しいのは前述の第35条、第38条への違反です。
電子商取引プラットフォームの経営者が両条項に違反した場合、5万元以上50万元以下の罰金、悪質な場合は50万元以上200万元以下の罰金が科せられます。また、知的財産権侵害に対し必要な措置を採らなかった場合も、同額の罰金が科せられることとなっています。

5.その他

本法はクロスボーダー(越境)Eコマースにも適用される点が明示されています(第26条)。

電子商取引法の中国語原文
はこちらをご参照ください。

(日本アイアール A・U)


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