環境保護新聞・テレビなどでよく報道されているように、著しい経済成長中の中国は、環境汚染大国でもあります。
中国政府は、環境汚染を起こしている企業等に対して汚染排出費や罰金を課してきましたが、金額が比較的低いことや、制度上の不備等から納付率も低いため、積極的に環境汚染対策に取り組む意欲のある企業はまだ少ないようです。
中国国務院法制弁公室は、このような状況をふまえ、企業等の環境汚染対策を促進するため、本年6月10日、中国で初めての「環境保護税法」の草案(以下「本法案」という。)を公表し、同年7月9日までパブリックコメントの公募を行いました。今回は本法案の主な内容をご紹介します。

課税の対象について

・大気汚染
・水質汚染
・固形廃棄物
・建築工事の騒音・産業騒音
の4種類(以下「課税汚染物」)が対象になるとされています。

納税義務者について

中国の領域及び中国の管轄するその他の海域において、課税汚染物を直接的に排出する企業、事業単位及びその他の生産経営者が納税義務者になるとされています。

ただし、企業等が、
1.法令に従い設立された汚水処理場、生活ゴミ処理場へ課税汚染物を排出する場合
2.環境保護基準を満たした施設、場所に産業固形廃棄物を貯蔵又は処分する場合
については、環境保護税を徴収しないこととされています。

課税額について

汚染物ごとに規定された単位当たりの税額基準に排出量を乗じて算出されます。
また、汚染濃度や排出量が国又は地方の排出基準値を超える場合は、通常の2倍又は3倍の金額が課税されることになっています。

減免措置

・農業生産に伴う汚染
・自動車、鉄道、船舶等の移動する汚染源からの排出物
・汚水処理場、生活ゴミ処理場からの国の基準を超えない範囲内の排出物
については、課税を免除することとされています。

また、地方政府の裁量により、大気汚染物又は水質汚染物を排出する濃度値が国または地方の基準の50%を下回り、かつ、汚染物排出総量規制の指標を超えない企業等に対しては、課税額を一定期間において半分に減軽する優遇措置を設けることができる、とされています。

日系企業への影響は?課税対象になりそうな企業は今後の動向に要注意です

経済成長を最優先してきた中国政府は、ようやく環境重視の姿勢を打ち出しましたが、規制の一段強化や罰金の増額で、中国現地で大規模な生産活動を行っている日系企業には、想定外の負担を強いられる可能性があります。
特に環境保護税が課され得るほどの汚染物を排出している場合は、中国における生産コストの増加及び事業活動に与える影響について本格的に分析・検討する必要がありそうです。今後の法案の動向についても注視しましょう。


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